プロジェクト物語03 N700系新幹線のぞみ。 その実現を支えた、究極の軽量化と高精度。

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 新技術を武器にして飛躍した、アクトの鉄道ビジネス。

「いま、この技術を採用しないと、おたくの会社は落ちこぼれてしまいますよ!」
なんという辛辣な言葉だろう。当時の鉄道ビジネスユニットのリーダーは、いま振り返っても、お客様に向かってよくぞまあ言い切れたものだと苦笑する。しかし、あのときは真剣だった。生意気だ、失礼だと言われようとも、プレゼンテーション相手である鉄道車両メーカーに"勝ち組"になってほしかった。
 1990年代に登場したFSW(摩擦攪拌溶接)という新技術は、それまでの溶接工法の常識をひっくりかえすほどの可能性を秘めていた。アルミの板と板の間をつなぎ目なく滑らかに溶接できるうえ、いままでにない接合強度を確保でき、溶接変形が少なく、しかも安価。これを鉄道車両に利用すれば、画期的な鉄道車両設計が可能になるだろう。いや、数年後には、間違いなく主流になっているに違いない。そう確信したからこそ、無礼を覚悟の体当たりを仕掛けたのだ。
そして、同席していた鉄道車両メーカーの幹部が「わかった」と言った。
一度は他社に奪われたプロジェクトだったにも関わらず、この一言ですべてがひっくり返った。このメーカーが製造する鉄道車両のうち「側」「屋根」「内装」の主要な部分を3つともアクトが受注することになったのである。そして数年後には、鉄道車両業界でアクトのシェアだけが激増した。

 第5世代新幹線の構想に向けて、全力でアプローチ。

現在のアクトにとって、鉄道車両の分野は主力となる市場のひとつであり、鉄道車両を設計製作するお客様、いわゆる鉄道車両メーカーとも強い信頼関係で結ばれている。しかし、過去はそうではなかった。専門性の高い分野であり、アルミ部材は提供するものの、より優れた鉄道車両をお客様といっしょに開発するなどという事はなかった。しかし、新しい注文を取るためには、鉄道車両メーカーの先にある鉄道会社から、より早く情報をとった方がいい。鉄道車両メーカーのお客様が新車両のコンセプトを固める際に、こちらも共に提案できれば他社よりも優位に立てるからだ。
今後のビジネスを考えるなら、たんなる素材サプライヤーで終わっている余裕などないと考え、鉄道ビジネスユニットの設立が提言された。FSW技術の提案は、アクトが鉄道ビジネスに対して攻めに転じた象徴だとも言えるだろう。

こうして、日々忙しく対応していた鉄道ビジネスユニットリーダーに、新たな情報が飛び込んでくる。それは「第5世代新幹線」という構想だった。
「鉄道ビジネスユニットを存続させていくためには、ぜひとも、この受注を実現したい」とビジネスユニットメンバー全員が意気込んだ。「さらなる軽量化」「快適性の向上」「環境性能向上」という第5世代新幹線の開発コンセプトを現実のものとするため、全力でのアプローチが開始される。
当時、鉄道車両構体の構造は、一枚板で形成するシングルスキン構造から、中空のトラス部分を内部に持つWスキン構造へとトレンドが移行していた。しかしアクトは、このWスキン構造への変革を終えたばかりの段階であり、まだまだ熟練しているとは言えない。厳しい納期と品質管理に対応すべく必死の対応を続けるスタッフたち。しかし、お客様からは、現場の工場製品能力とはかけ離れた要求が、さらにつきつけられる。たんなるWスキンではなく高精度薄肉Wスキンを、と。


全社一丸の研究開発で、芸術品から工業製品へ。

「芸術品を創れというのか!?というのが製造現場からの第一声でした」メンバーは当時の苦境を振り返る。
 「一品ものならば製造可能でも、工業製品としての品質や仕様を継続的に維持するのは不可能だというのが、当時の見解だったのです」
技術の粋を結集した新型新幹線にふさわしい、究極の軽量化と高精度。この要求を、全長25mにもおよぶ製品で実現できるのか?いくら自問したところで、明確な解答は見えなかった。

しかし、あきらめるわけにはいかない。
ダイス(金型)を作っては壊し、その設計指数をこまかく変更しては試作を繰り返す日々。試行錯誤は極限まで進められた。おかげで、ダイスの設計指針が9割方完成と思われるとこまでは到達した。けれど、最後の1割がどうしても超えられない。もう、これ以上は、だめなのか・・・。悩み抜いたメンバーたちは、最後の希望を社内の他部署に求めた。
「研究所に解析を頼んでみよう」と。
メタルの熱流動性解析およびダイスの構造強度解析。この複雑きわまる、しかも圧倒的にスケジュールの足りない解析依頼を、研究所は快く承諾してくれた。鉄道ビジネスユニットの情熱が伝わったのか、だれもが不眠不休で解析作業をおこなってくれたのだ。
そして最後のピース、残された10%が完全に埋まった。
第5世代、つまりN700系新幹線の車両構体用アルミニウム合金形材が、芸術品ではなく工業製品として誕生した瞬間でもあった。


世界へ、次世代へ、広がっていく鉄道ビジネスの夢。

のぞみN700系新幹線の登場は、東京駅〜新大阪駅間の運行時間を約5分短縮した。これは、軽量化による加速減速性能の向上によるものと言えるだろう。
技術の粋を目指した鉄道車両は1500両の製造が予定され、最終的に「のぞみ」のすべてがN700系になる見込みだ。
現在、世界的な地球環境意識の高まりによって、環境性能に優れた大量輸送手段である鉄道は相対的な地位を高めつつある。先進国、後進国を問わず、世界各国で高速鉄道のインフラ整備計画が持ち上がっている状況だ。とうぜん、最先端ともいえるN700系の技術を武器に、世界を相手にしたビジネスを官民一体で展開する動きも加速している。そのときには、アクトの開発した鉄道車両構体用アルミニウム合金形材もまた、世界で唯一の「究極の軽量化と高精度」を実現した形材として羽ばたいていくに違いない。
もちろん、N700系に続く、新たな新幹線構想も浮上してくるだろう。
「いったい次に求められるニーズはなんだろうと、その期待と不安はあります。あの熱い日々、スタッフみんなで過ごした議論と試行錯誤の日々が、きっとまた近いうちにやってくることでしょうね」

プロジェクトスタッフ・プロフィール

渡辺 忠Tadashi Watanabe

鉄道ビジネスユニット
1991年入社|法律学科卒

※所属部署は取材当時の物

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